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東京高等裁判所 昭和41年(行ケ)59号 判決

一 特許庁における本件審査、審判手続の経緯および本件審決の理由の要旨についての請求原因第一、二項の事実は、すべて当事者間に争いがない。原告は、本件審決が、原告の本件出願をもつて別異の二発明を一出願によりしたものとし、特許法第三八条に違背するので特許すべきものでないとしたのは、違法であるから、審決は取り消されるべきものであると主張するところ、本件出願が「治金鉄」と「電気セータ(線編合せた電熱)」との二発明を含むことは、当事者間に争いがなく、かつ、この二発明が相互に特許法第三八条ただし書きに規定する関係を有することについては、原告も何ら主張しないばかりでなく、本件に顕われた証拠によつてもこの関係の存在を認めることができない。

二 本件出願が、かかる二発明を一出願としてされたものか、二出願として各別にされたものかについて考察する。

右争いのない事実に、成立に争いのない乙第一号証の一ないし五、同第八号証、同第一〇号証、同第一一号証の一、二、同第一二、第一三号証、同第一六号証および同第一八号証の一ないし五と弁論の全趣旨とを総合すると、原告は、昭和三六年二月一三日、特許庁長官に、「特許願」と題し、「発明名称治金鉄電気セータ」「特許出願人新潟県西頸城郡青海町諏訪氏名平野春夫」「添付書明細書1通図面3通状書」と記載し、印紙二、〇〇〇円を貼附した書面(乙第一号証の一)を提出し、これに、(一)「特許願」と題し、「昭和36年1月23日」「特許庁長官殿」「発明名称電気セータ」「特許出願人平野春夫 住所新潟県西頸城郡青海町諏訪町」「添付書明細書1組図面1組状書1組」と記載した書面(印紙の貼付も出願人名下等一つの押印もない。乙第一号証の二)、(二)「明細書」と題し、「発明名称治金鉄」「図面諱説」「明細書」、「特許請求」の各項より成る書面(乙第一号証の三)、(三)「明細書」と題し、「発明名称電気セータ」「図面の諱説」「明細書」「特許請求」の各項より成る書面(乙第一号証の四)、(四)図面(乙第一号証の五)、が添付されていたこと、原告は、その後、昭和三七年四月二日付拒絶理由通知書に示された「本願は治金鉄、電気セータという明らかに同一とは認められない複数の発明を記載しているから、特許法第三八条に規定する要件をみたしていない」との拒絶理由第二項に応じ、同年五月二一日に手続補正書を提出し、みずから一発明増加料として一、〇〇〇円の印紙を追貼したこと、ついで、同月二五日、右拒絶理由第二項にもとづき、本件出願を拒絶する旨の拒絶調査が原告に送達されるに及び、原告は、同月三〇日同査定を不服として審判を請求したが、その審判請求書(乙第一二号証)には、「発明名称治金鉄他4項電気セータ」となつており、印紙の貼附による所定の手数料の納付が全くされていなかつたこと、そこで、特許庁は、同年八月一四日頃、原告に対し、審判長の補正指令書をもつて、審判請求による法定手数料六、〇〇〇円(審判請求一件につき二、〇〇〇円に、一発明につき二、〇〇〇円として二発明分を加えた額)の納付が命ぜられ、原告は、これに応じ、同年九月三日、同額を納付したこと(この際提出された手数料補正書における発明の名称の項にも「治金鉄1項船舶プロペラ2硬発電水車3項建築骨組4項汽車車軸」と「電気セータ」とが併記されている。)、また、昭和三八年八月六日原告提出の同月五日付手続補正書によつても、一出願について一発明としたことをうかがうことができないばかりでなく、原告は、本件各手続を通じ、表現において明確でなく、その意とするところが適確に把握できないものの多いことが、それぞれ認められる。

三 以上認定の事実、ことに、原告が前示認定のとおりの事由による拒絶査定を受けていながら、本件二発明についてそれぞれ一出願一発明とするに必要な処置を講ぜず、前示認定のような経緯で審判手続が進められるにいたつていること等、原告の特許庁における手続上の挙措に鑑みると、原告が本件において一出願により二発明の特許を受くべく出願したにとどまるとした特許庁の処理は、これをもつて直ちに違法とはなしえない。原告指摘の乙第一号証の二その他すべて証拠を合わせ考えても、以上の認定および判断をくつがえすに足りない。

四 右のとおりである以上、本件審決に原告主張のような違法があることを理由としてその取消を求める本訴請求は、理由がないから、これを失当として棄却することとする。

一(特許庁における審査、審判手続の経緯)

原告は、昭和三六年二月一三日、名称を「治金鉄、電気セータ」とする発明について特許出願をしたが(昭和三六年特許願第四九五五号),昭和三七年五月二五日拒絶査定を受けたので、同月三〇日、同査定を不服とし審判を請求し(昭和三七年審判第八一一号)、昭和三八年八月六日、同月五日付の手続補正書(訂正明細書添付)を提出した。特許庁は、昭和四一年三月一八日、右審判の請求は成り立たないとの審決をし、その審決の謄本は、同月三〇日原告に送達された。

二(審決の理由の要旨)

昭和三八年八月五日付手続補正書として提出された明細書によれば、その一つの発明は「治金鉄」に関し、あとの一つの発明は「電気セータ線編合せた電熱」に関し記載されており(出願時の明細書では、その一つの発明は「治金鉄」、あとの一つの発明は「電気セータ」)、両者は明らかに別異の発明に関するものと認められる。しかして、特許法第三八条は「特許出願は、発明ごとにしなければならない。」と規定し、本件出願は、この規定に反するから、拒絶されるべきものである。

三(審決の違法)

原告は、昭和三六年二月一三日本件特許出願にあたり、その願書(乙第一号証の一、印紙二、〇〇〇円貼附)には、「治金鉄」と「電気セータ」との二発明について各別の明細書(乙第一号証の三、四)およびこれに応ずる図面を添付した。原告は、その後、特許庁において、本件出願は「治金鉄」と「電気セータ」との別異の二発明を含むと指摘されたので(乙第八号証)、昭和三七年五月二一日差出の手続補正書とともに、これよりさき原告に送達されていた補正指令書(乙第四号証)の裏面記載の注意書第一三項により、印紙一、〇〇〇円を追貼し、これらは、同月二二日特許庁に受理された(乙第一一号証の一、二)。なお、原告は、特許庁に対し、これよりさき昭和三六年七月二三日付手続補正書二通(乙第五、第六号証)を提出し、それぞれ同月二四日および同月三一日に同庁の受付日付印を得ている。原告は、以上によつて、すべて手続の欠缺が補正されたものと考えていたところ、昭和三七年五月二五日拒絶査定を受けた。同査定によれば、本件出願は一出願一発明を規定する特許法第三八条の規定に反し拒絶されるべきものであるというのである。

そこで、原告は、同月三〇日、同査定に対する不服の審判を請求したところ、同年八月一四日頃、右審判請求による法定手数料として 六、〇〇〇円(印紙)の納付を命ぜられたので(乙第一三号証)、同年九月三日同額を納付した(乙第一六号証)。原告は、本件出願について、右発明ごとに各別の明細書および図面を作成提出して受理されており、これらが不備ないし不明確であると指摘されれば、常に右各別のまま、これに応じて補正して来たばかりでなく、前記願書(乙第一号証の一)に関しても、その提出と同時に、別に、不完全ではあるが「特許願」と題した書面(乙第一号証の二)までも差出しておいた。

ところが、特許庁は、ことさら、審査および審判手続上、本件出願が一出願二発明となるように扱い、印紙もこれに応ずるように貼附を命じただけで、出願手続に明るくない原告をおとし入れるにも等しい手続をもつて、本件審決をするにいたつたのである。原告は、前記のとおり本件二発明を各別の出願とするに必要な書類を提出しており、指示さえあればこれを補完し、手数料もただちに追納しうる状態にあつたことは、以上の経緯に徴し明らかである。したがつて、以上のように不当な手続のもとにされた本件審決は、違法のものとして取り消されるべきである。

よつて、請求の趣旨のとおりの判決を求める。

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